2019年、最高レベルの環境認証「HVE」を取得 鬼才ディディエの親戚にして本家にあたり、そのワインは対照的な“正統派” 石灰岩の強いキンメリジャン土壌「テール・ブランシュ」が主体 古木と超低収量から生み出す「クラシック王道派」のプイィ・フュメ <セルジュ・ダグノー>
ドメーヌはロワール川右岸、プイィ・フュメの中心地プイィ・シュール・ロワールの町から北へ3キロ、葡萄畑に囲まれたサン・タンドランの小さな集落にある。ドメーヌ設立当初は小麦畑なども耕作する複合農業を営んでおり、現在のワイナリーも納屋だった建物が一部利用されている。初代が購入した土地に7haの葡萄を植え、ドメーヌとして規模を拡大したのは2代目である。
3代目セルジュに男子はなく4代目当主は年子の姉妹が務める。
現在はワイン専業で21haを所有し、0.75haのシャスラー種(プイィ・シュール・ロワールのアペラシオン)を除いて、ソーヴィニョン・ブランからプイィ・フュメを生産している。フルタイムの従業員4名を抱えているが、基本的に栽培から販売まで家族で行いたいためこれ以上ドメーヌの規模を大きくするつもりはない。
父セルジュからドメーヌを任されている年子の姉妹、おっとりとした姉フローランスはボーヌの農業学校で、男勝りの妹ヴァレリーはマコンの農業学校で学んだ。特に分担も決めず、家族全員で協力して運営しているほのぼのとしたドメーヌだ。
ドメーヌが所有するのは、川沿いの肥沃な沖積性土壌に水捌けの良さや美しい酸をもたらす小石や砂が混じるプイィ・フュメの典型的な土壌ではなく(ディディエはこちらがメインでかつシレックスも含有する別格テロワール)、プイィ・フュメのやや内陸に広がる石灰粘土土壌のテール・ブランシュ(白い土)と呼ばれる表土の下にキンメリジャンが広がる土壌の畑。ミネラル豊かな輪郭をもつワインが生まれる畑であるが、サンセールに比べると標高がやや低い位置に広がるプイィ・フュメはやや温暖で、また、ロワール川の谷間の土地ゆえに、通年を通して冷たい風から避けられるため、夏の気温も高くなる。そのため、サンセールのような毅然とした酸や骨格を持ちつつも、果実味や肉付きのふくよかなワインが生まれることとなる。
セルジュ・ダグノー家は、近隣の奇才ディディエ氏の親戚にして本家にあたる。地元では、個人愛好家向けのインパクトの強いワインがディディエならば、プロのダイニングシーン向けのオーソドックスな正統派ワインがセルジュとされる。