天才的ワイン職人ファミリー“リフォー家”の末弟が家業を継いでから行った数々の変革 10年の時を経て磨かれた、アートの如きワインの世界がそのベールを脱ぐ <ドメーヌ・クロード・リフォー>
ドメーヌ・クロード・リフォーは、サンセールの街のすぐ北、シュリー・アン・ヴォー村に位置する。現在は、ブルゴーニュで修行経験(オリヴィエ・ルフレーヴと親しかった)があり、初代当主クロード氏の息子でもあるステファンが2代目当主を務め、妻ベネディクトと共にドメーヌを運営する。
初代クロード氏の長男は、近年ピュリニー・モンラッシェ村最上の生産者の一角として名高い「エティエンヌ・ソゼ」の当主であるブノワ・リフォー氏。近年サンセール最上として名を馳せつつある弟のステファン氏を含め、正に天才的ヴィニュロンファミリーが「リフォー家」である。
このドメーヌでは4つの村にまたがる8つのリューディに位置する33の小区画(合計15ha:ソーヴィニヨン・ブラン13ha、ピノ・ノワール2ha)を所有し、全ての畑でビオディナミを実践する。ほとんどの区画は、「テール・ブランシュ」と呼ばれる柔らかい石灰岩の土壌を持つが、一部の区画はカイヨット(小石を含む石灰質)土壌とシレックス(火打ち石)土壌となっており、これがドメーヌの持つ多様性や複雑性などアート的要素の源となる。
畑では自身と妻ベネディクトに3人のメンバーを加え、手作業による畑作業を行っている。サンセールの生産者では珍しい手摘み収穫を行うなど最大の労力を惜しまない。2016年にオーガニック認証を取得、ビオディナミ農法を実践している。毎年の収穫時には、妻ベネディクトが収穫チームを率い、ステファンは収穫された葡萄の選別と圧搾をする分業体制を敷く。
醸造においては、多種多様な区画ごとの個性を生かすために、区画ごとに収穫し、圧搾・醸造を行う。すでに葡萄の段階で精密に土地の個性が表現された個性を守り表現するため、過度な樽の使用をせぬよう細心の注意を払う。ロゼを除いたすべてのワインは無濾過で瓶詰めされる。
「サンセールでは、すべての葡萄畑が地理的、地質学的に唯一無二の個性を持っている。私たちの仕事は、これらの異なる各畑の個性的な表情を明らかにし、そこから最高峰の食卓にふさわしい、偉大なワインを生み出すことである。私たちを突き動かしているのは、自分自身の完成や唯一無二のテロワールの個性に忠実な美しいテクスチャーを持つワインを造ることだ」と当主ステファンは熱く語る。
サンセールのワインは、古き時代にはブルゴーニュの銘醸特級ワインに劣らぬ評価を受けながら、長年、大手組合による大量ブレンド型ワインが主流を占めてきた。ステファンが実践する個々のテロワールを表現したアート作品の如きサンセールは、かつての栄光を蘇らせんとする壮大な試みなのだ。