時代と技術は変われども、クロ・ルジャールからギベルトーへと継承された 「正統王道のソミュール」への哲学と魂は今、一人の情熱的若者に繋がれる…
2007年、英語教師を務めるためにアメリカからパリに移住したブレンダン。ワイン愛好家だった同僚の影響でワインに夢中になり、教師2年目の2009年には既にワインの世界に没頭する人生を決意した、情熱的な人物である。
パリの学校にてワイン(主に流通)を学んだ後、ワインショップに務め、2012年にはロマン・ギベルトー氏のワインを販売していた。彼がギベルトーのブレゼ 2008を試飲した時、シュナン・ブランが醸し出す石灰岩のテロワールの素晴らしさに圧倒される。すぐさま葡萄の栽培や醸造について学ぶためにソミュールに移り住みワイン造りに専念したいとギベルトーに懇願した。約2ヶ月間にわたり彼に絶え間なく連絡を続けた結果、ギベルトーは若きブレンダンの情熱を買って、彼を見習いとして受け入れることを承諾したのである。
見習い3年目の2015年初頭、ギベルトーは自身のモノポール「レ・シャポデーズ」のシュナン・ブラン1haをブレンダンに貸与することを決断。こうして、ブレンダンの初リリースとなる2015VTGが生まれることになった。ブレンダンが夢中になっていたエレガントでピュア、縦長で石灰岩の塩味があるシュナンのスタイルを持った2015VTGは瞬く間に完売した。2018年には、ソミュール・シャンピニーのアペラシオンに位置する町「シャセ」の土地を購入し、古いワインセラーを備えた本格的なドメーヌを手に入れた。
2014年現在、ドメーヌは「テュフォー」と呼ばれる柔らかい白亜質の石灰岩からなる2つの銘醸畑「Brézéブレゼ」 と「Bizayビゼイ」に3区画、合計約3.5haの畑を所有する。
畑ではイヴ・ヘロディ農法(ビオディナミに近い土壌改良法)を実践する。土壌の健全な再生を促すため、畑の中で被覆作物(そら豆、ライ麦、クローバー、マスタード等)の栽培も実践し、ナチュラルな肥料と窒素を土に還元する。テロワールの真の個性をワインを通じて表現するため、葡萄の自然な成長への介入を最小限に抑える栽培に細心の注意を払う。
醸造では畑由来の自然酵母のみによる発酵を行い、古いオーク樽で熟成を行う。優れた農業により酸度の高い葡萄を得られる為、SO2の使用は一般的な“自然派”よりも更に低く、プレス時に20mg/L以下、発酵後の過程でも10mg/L以下、最終的な瓶詰め時のトータルSO2は25~60mg/L(フリーは20以下)となっているが、一部の“自然派”のような濁った味わいやバクテリア汚染による収斂性のある尖った酸味等は一切無い、毅然とし凛とした酸味を持つ王道ワインを生みだす。